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神亀酒造「ヴィンテージウィーク2026」訪問記 時間に耐える酒は、造りから始まる

  • 2026/09/25
  • hirata

酒の勝鬨 平田です。
9月17日(木)、埼玉県蓮田市の神亀酒造さんで開催された「ヴィンテージウィーク2026」にお邪魔しました。
神亀ヴィンテージウィークは、蔵で大切に貯蔵・熟成されてきた日本酒を特別に味わえる催しです。
2026年は9月16日から22日まで、神亀酒造で開催されました。
今回の訪問で感銘を受けたのは、熟成は酒を貯蔵庫へ入れてから始まるものではない、ということでした。
洗米、蒸し、麹、酒母、搾り、火入れ。
米の持つ力を引き出す一つひとつの工程が、時間を重ねても崩れない酒の骨格につながっています。
蔵見学とヴィンテージ酒の試飲を通して感じた、神亀の酒造りと時間の関係をご紹介します。

杜氏の太田さんに、蔵の中をご案内いただきました。

洗米機。

造りの時期は、パネルの画のような形で活躍します。
精米は業者さんへ委託精米。
精米歩合は60%前後が多く、限定吸水。
笊で手洗いしてから、時間をお決めになるそうです。

かまど。
煉瓦造りで、重油バーナーで下からお湯を沸かし、和釜を載せて米を蒸します。

和釜。
着火は朝3時前後、蒸しは5時頃で7時には終わる様な日程との事。
朝7時までに終わらせると、その後の麹造りの作業が捗るので、
麹をしっかりと造るためにも、その時間帯にしていると仰っていました。

造りの時期の蒸米の様子。

蛇管。
火入れも和釜で行われ、熱湯の中に蛇管を沈め管の中に酒を通して温めます。
10,000L辺り90分程かかるとの事です。

麹室へ。
神亀酒造さんの要となる麹造り。
全量蓋麹で仕込みが行われている為、麹蓋の数に圧倒されます。
造りの際は室温を30℃前後に保たれているとの事です。

画像左が昔から使用されている麹蓋で、右が新しい麹蓋。
触らせていただくと、昔からの方が木目がはっきりしていてざらっとした触感で、
新しいものはさらっとした触感でした。
上から空の麹蓋を被せる事により、麹菌が酸素を求めて中に入っていき、
より米の中心へと菌糸が向かってくれます。
温度が上がってきたら被せている麹蓋の角度を変えたりして、調整を利かせているとの事。
基本的には麹に頑張って発熱してもらうので、室温を上げすぎたりもしないと仰っていました。

綺麗に麹が並んでいます。

酒母室。
速醸もとですが、酒母は18日間かけて仕込みます。(一般的な速醸もとは14日程度)
時間をかけて仕込む事でよりしっかりした酒に仕上がり、その後の熟成にも繋がります。
酵母は主に9号酵母。吟醸酒等には7号を使用されています。

実際の仕込みの様子。

大きいタンクに移っても、今は半分位の量で少しずつ仕込まれているとの事。
奥のパネルは7号酵母。泡有りでかなりの高さまでになるそうです。

搾り機は佐瀬式。
酒袋に入れたもろみを積み重ね、圧力をかけずにゆっくりと搾っていきます。

搾りの様子。

搾ったばかりのお酒は真後ろにあるタンクに貯蔵され、滓引きを行います。
取れた滓は、活性にごり等に使用されているとの事です。

貯蔵タンク。
その数の多さにも圧倒されました。
昭和に仕込まれた酒や吟醸酒、長期熟成の酒等は年間で10℃位の室温に保たれていて、
定番酒の神亀 純米辛口や、ひこ孫 純米等は常温で貯蔵されています。

熟成酒粕を発見。
杜氏の太田さんは以前奈良の酒蔵に居た事もあるそうで、奈良漬けも作っていたと仰っていました。

蔵の中に井戸がありました。
仕込水等はやや硬水、割水等はやや軟水で使い分けられているそうです。
飲ませていただいた所、硬水はすっと入りシャープで、軟水は口に入れた瞬間柔らかく、
はっきりと違いが分かる位でした。

ひと通り見学を終えた所で、蔵の横の直売所にて特別試飲をさせていただきました。

2001年から2012年までの熟成酒と、定番酒や季節酒を試飲させていただきました。
定番酒の神亀 純米辛口やひこ孫 純米酒は、米の旨味をしっかりと感じる王道の味わい。
肉料理等も受け止めてくれそうな印象でした。
熟成酒のひこ孫 純米吟醸 協会901号 2008BYは、熟成香があり濃密な旨み。
鳥取田中農場山田錦 純米吟醸 9号酵母 2010BYは、柔らかく熟成していて出汁の効いた料理等にも
寄り添ってくれそうな印象でした。

【写真左から】
代表の小川原さん、杜氏の太田さん、酒の勝鬨 堀口、蔵人の伊藤さん。
貴重な会を開催していただき、誠にありがとうございました。

今回の蔵見学を通して、神亀の熟成酒が単純に「長く置かれた酒」ではないことがよく分かりました。
洗米、蒸し、麹、酒母、搾り、火入れ。
米の良さを最大限に生かし、時間を重ねても味わいを保てる酒を造る。
その積み重ねが、熟成によるやわらかさや深みにつながっていると実感しました。

一方で、古い酒ほど優れているということではありません。
若い酒には若い酒の瑞々しさがあり、時間を重ねた酒には香り、酸、旨味がなじんだ一体感があります。
大切なのは、その酒をどの温度で、どの酒器に注ぎ、どの料理と合わせるかだと思います。

酒の勝鬨では、今回特に印象に残ったヴィンテージ酒の一部を買い付けます。
商品については、後日改めてご案内します。
また、今回の体験を買付酒の販売だけで終わらせず、フレッシュな酒と時間を重ねた酒を料理とともに比較し、それぞれに合う温度や酒器、提供方法を考える飲食店様向け企画「酒の頃合い」を準備しています。

先日弊社で入札購入しました黒龍酒造の氷温熟成酒「無二2018」についても、日本酒の時間的価値を考える象徴としてご紹介する予定です。
企画の最終的な目的は、単に高額な熟成酒を販売することではありません。
特別な酒を通して気づき、今ある酒を見直し、最後はそれぞれの飲食店様が日常的に使い続けられる定番酒へつなげること。と考えています。
企画が出来次第ご案内を考えております。