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長野県の酒フェス「YOMOYAMA NAGANO」へ行ってきました。

  • 2023/05/12
  • katidoki
よもやまながの

5月10日に浅草ビューホテルにて開催された、長野県の酒フェス「YOMOYAMA NAGANO」へ行ってきました。2020年まで開催していた「長野の酒メッセ」を3年ぶりにリニューアルしたもので、YOMOYAMAのネーミングには、四方を山に囲まれたまさに四方山(よもやま)の地形という意味と、よもやま話に花が咲くような時間を過ごしてほしいという思いを込められているそうだ。 

長野県は約80社の酒蔵があり、今回は54の酒蔵が終結した一大イベントだ。当日はおそらく大大盛況で、すべてのブースをまわることは無理だろうとの想定から、とあるテーマをいくつか自分なりに準備していたが、今回は長野県の酒造好適米「山恵錦」にズームすることにしよう。 

「山恵錦(さんけいにしき)」は、「たかね錦」「金紋錦」「美山錦」「ひとごこち」などに次ぐ長野県のオリジナル酒造好適米として2017年に品種登録した県内では最も新しい酒米である。名前の由来は「信州の山々からの恩恵」をイメージして名付けられている。   

長野農業関係試験場の「山恵錦」に対する評価。  

「美山錦」と同じ熟期の品種で、稲の丈が短く倒伏しにくく、冷害やいもち病に強い特徴がある。収量・玄米重とも「美山錦」より優れ、心白(粒の中心の白濁部位で良好な麹造りに必要とされる)の発現率が高く、玄米の外観品質が優れている。精米時の割れが少ない等の加工適性があり(高度とう精)、清酒(純米吟醸酒)での食味試験の結果、芳醇な含み香があり、なめらかさがあると評価されている。   

松尾

「山恵錦」を語るうえで欠かせない蔵元として「松尾」の銘柄で知られる信州北部、信濃町に位置する高橋助作酒造店がある。なぜかというと、「山恵錦」と名前が付く以前の品種試験段階から、「黒澤」「井筒長」の銘柄で知られる佐久穂町の黒澤酒造と情報交換しながら、仕込みを試しては繰り返しをしていたそうで、いわば「山恵錦」酒のパイオニアの酒蔵であるからだ。その蔵元代表 髙橋邦芳氏に話を聞くことができた。   

「山恵錦は、 山形県の酒米である出羽の里を父とする(信交509号を母とする)酒米で、出羽の里の特徴が出ているのですが、同じく出羽の里を父とする雪女神などと比べると、ちょっと変わった性質なんです。あっさり、さっぱりとした酒質になりやすいが、つかみどころがないというか、でもその反面、まだまだ可能性がある酒米だと思います」  

「松尾」のお酒は「山恵錦」を使ったお酒を数多くリリースし、その基本は生もとづくりである。「山恵錦」を作る田んぼの土地名を付けたお酒などがあるが、嫌味のない程度の米感と酸味とのバランスがとても良い感じで、すこぶる好印象。もしかしたら「酒の勝鬨」でも取り扱いある?  

その他の蔵元でも「山恵錦」を使ったお酒が数多く出品されていたが、その一部ではあるが話を聞けたところを挙げてみよう。  

「うちの仕込み水は県内では珍しい硬水で、さらっとキレのある味わいが特徴ですが、山恵錦だけなぜか甘くなるんです」小諸市 大塚酒造(代表銘柄:浅間嶽)  

「山恵錦と白麹を使用した14度とやや低アルコールを目指したお酒です。美山錦とひとごこちの中間的な感じですが、探りながらやっています」佐久市 古屋酒造店(代表銘柄:和和和/深山桜) 

「山恵錦の軽快にあがる米質を活かした低アルコールの原酒です。ちょっとアルコール度数14度を超えちゃったけど、心地よい酸があります」木祖村 湯川酒造店(代表銘柄:十六代九郎右衛門/木曽路)  

「山恵錦はとても使いやすいですね。うちの蔵は硬水でカルシウム分が多いので、発酵が進みやすいですが、とてもきれいな仕上がりになっています」伊那市高遠町 仙醸 (代表銘柄:黒松仙醸)  

「3年前から山恵錦を使うようになりました。パイナップルのような香りと、心地よい酸が出ています。昨年は美山錦が不作で酒造りが思うようにできていない蔵元もあるようです」飯山市 角口酒造店(代表銘柄:北光正宗)  

「山恵錦はとても使いやすい。溶けは良いがアミノ酸が少ないのできれいな酒質になる。今後、美山錦に代わる酒米になるだろう。農家さんには県外の蔵元からの引き合いが多くあるそうだが、今のところ県が出さないようにしているようだ。」松本市 亀田酒造店 (代表銘柄:アルプス正宗)  

残念ながら黒澤酒造では、他のお客さんにずっとロックオンされていて話は聞けなかったが、どの蔵元も総じてきれいな口当たりが特徴と言い、実際に飲んだ印象もスッと入ってくる感じが印象的であった。  

そういえば、昨年のちょうど今頃、長野のとある温泉旅館へ行ったとき、宿の兄さんが日本酒に詳しく「山恵錦のお酒はとてもいいよね」と話していたことを思い出した。品種登録から今期で5年目になる酒米だが、多くの酒蔵が「山恵錦」を使ったお酒をリリースし、年を重ねるごとに知名度も上昇気流に乗っている。レペゼン・ナガノの贔屓目を差し引いても「山恵錦」から生まれるお酒の未来は明るいだろうと改めて感じたフェスであった。   

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(酒の勝鬨 ヤナギサワ)