LINEで送る
Pocket

10月29日、長野県佐久市茂田井にある大澤酒造さんへ、峯岸、堀口、黒沼、高田、そして私柳澤で行って参りました。

先日より当社とお取引きを開始頂きました地酒問屋・株式会社花山様が流通する銘柄「明鏡止水」で知られる蔵元様です。北陸新幹線・佐久平駅を降りると代表取締役社長 大澤真様のお出迎えと、花山 大澤泰斗様のご同行による手厚い待遇を頂きます。

大澤真社長様は普段「大澤酒造は浅間山と蓼科山の間にある酒蔵」と説明しているそうですが、大澤酒造のある町は以前は望月町として北佐久郡にあり2005年の市町村合併で佐久市の一部になりました。蔵元の前には旧中山道が通っており、宿場町・望月宿として栄えた場所でもあります。社長様曰く地元では「佐久のチベット」と呼ばれているようでかなり寒い場所になりますが、今年は暖かく積雪もまだだそうです。古くから「浅間山に3度冠雪すると、麓にも雪が降る」と言われ、今年は2度浅間山に雪があったそうなので、そろそろ初雪になるでしょうとのことでした。

さて、蔵元に到着すると早速大澤真社長に説明を頂きます。お話をして頂く場所は、元々は精米所だった場所を改築した書道館にて。温かいお茶と手造り干し柿、そして奈良漬けのお供とともに始まります。

書道の町・望月と明鏡止水

望月は古くから書道の町としてしられ、町には書道教室も多くあるとか。地元出身の現代書道の父とも呼ばれる比田井天来の遺墨や作品が展示されている「天来記念館」があるのですが、それをきっかけに先代社長と書道家・吉野大臣先生が知り合うことになります。そして現在の代表銘柄となる「明鏡止水」をはじめ「大吉野」「垂氷」「勢起」といった大澤酒造さんの銘柄の題字を手掛けているのが、実はその吉野大臣様なのです。吉野先生は天皇陛下に書道を教えるなど書道界では有名な方で、現在は吉祥寺にお住まいだそうです。

「明鏡止水」のラベルの書体が複数あるのは、吉野先生がお酒のイメージを元にインスピレーションして、新しい商品の都度題字を描いているからだそうです。そして、その吉野先生の助言により今回説明を頂いている「書道館」を造ることになったそうです。そして「書道館」の他にも絵画などを展示する「しなの山林美術館」や、日本最古の酒が発見された先祖より伝えられた生活用品、酒造りの道具などを展示した「民俗資料館」等も敷地内にあり見学ができます。

工程すべてを蔵元全員で造る

大澤酒造は現在社員は5名のみだそうで、全て地元出身の人で構成されているそうです。以前は南部杜氏が来られていたそうですが、現在は真社長の弟様である実さんが杜氏も務め酒造りをしています。5名の社員はある工程のみを担当するのではなく、全ての工程を全員が出来るようにしているそうです。そうすることで誰かが不在の際にも酒造りに影響が出ないし、社員全員が最後まで愛情を込めて造ることになるとおっしゃっておりました。また、社員の年齢が平均的に離れていて酒造りを絶やさないように心掛けており、そろそろ新しい人材も入れる時期かなとも考えているようでした。たださすがに冬場の忙しい時期は、農家の方が3名くらい手伝いにやってくるそうですが。

「明鏡止水」の始まり

東京の大学を卒業し、他業種で修業を積んだ真社長は、平成元年(1989年)に大澤酒造へと戻ります。蔵元に戻られた当時は様々なご苦労があったそうで、地元の酒販店に営業に行きサンプルを持参して意見を求め再訪すると、そのお酒に値札が貼られて売られていたなんて事もあったりと、なかなか理解してもらえなかったそうです。そんな頃、時を同じくして株式会社花山も地方銘酒専門代理店として新発足します。

自分たちの造る酒を分かってもらえる人に売りたい、そんな想いと繋がりから大澤酒造と花山の関係が始まります。そして花山の代表取締役社長・大澤千金様の命名によって「明鏡止水」が産まれるのです。すると造られたお酒に対する意見が花山側から色々と返ってきたそうです。真社長が欲しかったのはこのような「声」であり、そこから「明鏡止水」は進化を続け生産を増やし、現在では大澤酒造で造られる清酒の85〜88%が「明鏡止水」になるまでになったのです。

たった1本のタンクから始まった「明鏡止水」ですが、「明鏡止水を飲んで日本酒が好きなった」という声も聞くくらい、日本酒好きなら誰もが知っているような銘柄へと成長してゆくのでした。大澤酒造ではこの他に「垂氷」「勢起」や地元の地酒「大吉野」や「信濃のかたりべ」等も造っており「勢起」とは、蔵を陰ながら支えた真社長のひいおばあちゃんにあたる方の名前から取っているそうです。

大澤酒造の水と米

大澤酒造で造られる清酒の仕込み水は、蓼科山から流れる上水路の水を鉄管で引っ張って使用しているそうで、井戸水は用いてないそうです。井戸水を用いるより上水路の水の方が酒造りに向いていたそうで、水質は軟水になるそうです。この水は蔵元のある一帯の一般家庭の生活水に用いられているものと一緒だそうで、とても水質に恵まれた場所なのです。ちなみに私の実家のある軽井沢は浅間山水系になるのですが水質は硬水になるそうで、そういえばそんな感じだったかもって思い出してるとこであります

大澤酒造で使用する酒米は基本的に酒造好適米で、使用されている量の順番でいうと「美山錦」「山田錦(兵庫県産)」「ひとごこち」「金紋錦」「雄町(岡山県産)」だったそうですが、去年から縁があり飯米でもある岡山県産の「朝日」も使用しているとのことです。基本的には長野県産の酒米を用いることが多いようですが、最近新たに品種登録された長野県産の酒造好適米「山恵錦」の使用は検討中だそうです。

大澤酒造の酒造り

ここからは杜氏でもある大澤実様に、蔵の中を見学しながら説明を受けます。蔵に入る前に白衣と帽子を付けますが、なんと白衣が半纏(はんてん)仕様になってて暖かい!!おかげで見学最後まで冷えることなく回れました。

冒頭で話しましたが元々は精米所がありましたが、現在ではすべて精米されたものを仕入れて酒造りをしているそうです。精米工場としては日本最大規模で、長野県内約70の酒蔵が使用する酒造米を精米し、コンピュータ制御で高品質な精米を行う酒蔵用精米機など最先端技術で自動化された設備を備える、長野県酒造協同組合が大町市に構えるアルプス搗精工場でされたものだそうです。

洗米は手作業ではなく気泡で洗う洗米器を用いているそうです。手作業は確かに丁寧な印象を受けますが、実際にはムラが出易いと言います。その点、機械の洗米器であれば均等に洗えるので利点がある。

米を蒸す甑(こしき)は一般的には円形をしてますが、大澤酒造では四角い甑を用いています。四角いと円いものよりは単純に面積が広く、一度に多くのお米が蒸せるメリットがあるそうです。また順番は前後しますが、お酒を搾る槽(ふね)も少し変わった形状だったり、一般的に用いられる機材とは異なるものが多いようですが、実さんは「与えられた環境で最大の能力を発揮すればいい」と考えているそうです。

麹造りは全て箱麹で行い、麹室は床部屋と棚部屋に分け、2年前に作り直した麹室はオールステンレス仕様。また、麹が2種類ある場合は、カーテンで仕切りコントロールしているそうです。見学の際に「美山錦」を49%まで磨いた麹を頂きました。

続けて現在はお休み中の酒母室の前にて大澤酒造で用いる酵母は「長野酵母」と「金沢酵母」のみを使用しているとのことで、以前は鑑評会を総なめし一世を風靡した「アルプス酵母」を使用したお酒も造っていましたが、すると他県の酒蔵も「アルプス酵母」を使用し、酒質が似たようになることをあまり良い状況とは思えず、トレンドではなく地に足のついた酒造りを目指し、この2種類の酵母のみを用いているそうです。特に「金沢酵母」の落ち着いた味わいが好きだそうで、大澤酒造のお酒は「金沢酵母」単独か、「金沢酵母と長野酵母」のブレンドのみのお酒でライナップされてるようです。

他にもいろんな場所を見させて頂き、プチプチと音のする仕込み中のタンクや、瓶詰め貯蔵されたP箱を10段積んだ3℃、5℃、8℃の巨大冷蔵庫や、ラベルを手貼りしている作業場、そして仕込水で作ったサイダーなんかも作っているそうで、子供達にも美味しい仕込水の味を知ってもらいたいという思いで造っているそうです。

見学が一通り終わったところで感じたのは、敷地は結構広いですが、少人数で手際よく酒造りがされている印象でした。そして何より大澤真社長、実杜氏のお人柄がとても温かく素敵でした。

最後にですが、瓶のキャップに描かれた模様は、屋号である蔦屋の家紋と、3つの円はそれぞれ生産者、売り手、飲み手を表現しているようで、3つの円が重なる真ん中の円はつまり「縁」を意味しているようです。

まとめ

ここまでお話をまとめますと、

・ラベルの題字は有名書道家によるもの
・敷地内には色んな展示品
・日本最古の酒が見つかった
・蔵元全員で愛情を込めて最初から最後まで造る
・明鏡止水は蔵元の反骨精神と信念から生まれた
・仕込水は町の生活水でもある
・蔵見学に優しいはんてん仕様の白衣をご用意
・与えられた環境で最大の力を発揮
・使う酵母は長野酵母と金沢酵母のみ
・地元の子供にも人気、サイダーも作ってる

といったところでしょうか。

この後、大澤酒造商品の試飲が始まりますが、昼食としてご用意頂いた素晴らしいお蕎麦屋さんでも飲み比べを致しましたので、そちらを含めて絡めた方が面白いと思いますので、最近始めました蕎麦呑みブログ「そばにさけ」特別編として近日公開させて頂きます!