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一本義久保本店さんを訪問した翌日、次なる酒蔵・喜多酒造さんへ向かいます。福井駅から特急しらさぎに乗車して約1時間、米原駅へ到着。駅ロータリーにて、喜多酒造株式会社 代表取締役社長 喜多良道様にお迎え頂きました。

小さい頃、家族旅行で彦根城に行った記憶があるような、ないような、あまり憶えていないので初の滋賀県上陸ということに致します。車中、喜多社長から滋賀県豆知識を色々と教えて頂きました。

滋賀県は人口や面積など、色んなのものが日本の1パーセント位だそうですが、酒蔵の数は多くて全国比率も高く、滋賀県は隠れた酒どころだそうです。そして県民1人当たりの収入は全国4位と高く、近江商人の血ををひく商魂たくましい面があるのではないかと言うことです。

他には、自動販売機の設置率は全国1位なんていう情報もありつつ、この辺りは岩盤が強いため震災から強いという理由から有名企業の大きな工場や施設が道沿いの至る場所に並び、データベースを扱う企業等もありました。

さらに岩盤が強いと、とても良い水が出るそうで、懐かしい飲料「チェリオ」の会社が水を求めて、この地に工場を設けたそうです。それ以来、生産性も向上したと言います。もちろん水が良いということは酒造りにも適した場所であり、生活上水も井戸水が使われているそうです。

途中、名神高速道路の「弾丸道路」と呼ばれるほぼ直線部分の場所を通過しつつ、酒蔵付近まで来ると喜多酒造さんが借りているという大きな冷蔵庫倉庫や、実際に使用している田んぼなども見ながら、ついに喜多酒造さんに到着しました。

喜楽長の原点、自家製米と杜氏と造る酒

蔵元は、京都から名古屋に至る間道として近江商人の伊勢通商などに利用された八風街道沿いに位置し、立派な庭には先代から大事にしているという手入れされた赤松の木があります。中に通されると、ふすまだけで仕切られた和室が4部屋あり、大勢の人が集まるような時にはふすまを外して広く使えるという、関西の特徴であるという和室の一室でまず少しお話を聞きました。

「お客様に喜び、楽しく、酒を飲みながら、長生きをしていただけるように」という思う願いから名付けられた「喜楽長」。現在では米の旨みを十分に引き出し調和のとれた優しい甘みのある味わいのお酒として知られていますが、その原点は精米にあるそうです。

農口尚彦杜氏がまだ菊姫にいた頃に蔵元を見学した際、当時から自社精米に取り組んでいたことに感銘を受けて喜多酒造さんでも精米機を導入したと言います。滋賀県で最も早く自家製米を取り入れた蔵元で、その頃には精米専門の精米杜氏がいたそうです。昔は削られたヌカの量から精米歩合を割り出していたそうですが、現在ではコンピューターを搭載した近代的な精米機になっており、最高精米歩合は30%まで可能だそうです。

喜多酒造さんは今も能登杜氏を招き酒造りをし、現在では四家裕杜氏が務めます。仕事終わりに喜多社長と四家杜氏、そして跡取りとなる娘さんの麻優子さんは、お酒を飲みながら酒造りの話などをしているそうです。ちなみに喜多社長が毎晩飲むお酒は「喜楽長 上撰」だとか。スッと気持ち良く飲めるそうです。

喜楽長の酒造り 〜 限定浸漬

喜多酒造のある現在の東近江市は、2005年、2006年に八日市市など6つの市町が合併されて発足された、愛知川に沿って鈴鹿山脈から琵琶湖岸まで東西に長い市域です。仕込みに使われる愛知川(えちがわ)の伏流水を自家井戸から使用していますが、水質は軟水系で酒造りにとても適しているそうです。

精米された白米は洗米機を使用し10キロ単位で洗米されますが、10キロを洗うのに約200リットルもの水が必要だそうですが、水には困ることはなさそうです。洗いあがった白米を秒単位で制限して余分な水を吸わないように管理した限定浸漬を行い、脱水して翌日に甑(こしき)に入れ蒸しに入ります。甑の底にはお米を蒸す際に均等に蒸せるよう、米粒大の樹脂の粒のダミー米が入ったメッシュ状の袋が敷かれています。

蒸しあがったお米は小分けにしてキャスターで運びタンクに入れ仕込まれます。この際にエアーシューターを用いれば早いが、ホースなどを洗う手間を考えたら現状ではこの方法が良いとのことです。酒蔵ではとにかく洗う物が多いそうで、以前は洗った作業着などを田んぼで乾していたところ、風で飛ばされ台無しなっていたそうですが、そこでコインランドリーにある中古の乾燥機を購入して効率化したそうです。

仕込みには低温発酵ができる最大1500kgまでの小さなタンクを使用し、丁寧な管理のもと酒造りが行われています。ちなみに今年は63本の仕込みを予定しているそうです。

 

酒母、麹米造りと山田錦

酒母室には、3、4種類の酒母が小さなタンクが仕込まれてました。喜多酒造さんで使用される酵母は協会14号系が多く、その内の60%は泡なしの1401酵母だそうです。泡なしの方が、香りが出て酸が優しいそうです。また、7号系の京都酵母や自家酵母も使用しており、自家酵母は滋賀県工業技術センターに保存されてるそうです。そしてアミノ酸はあまり出すぎると濃い味になりすぎるので、そうならないように仕込んでいるそうです。

見学当日、蒸し上がった白米に種麹を振り(種切り)をし、麹造りを麻優子さんや蔵人の方が丁度行なっている最中でした。麹室はステンレスの壁に覆われており、2部屋あります。ステンレス製にするのは温度調整が可能なのと、やはり清潔に保てるのが一番のメリットだそうです。

隣の部屋には、ゴアテックスの上にの乗せられ、高級毛布で覆われた菌の発芽を待つ状態のものがあります。その後、箱麹に8~10キロ程度に取り分け、二泊三日かけて麹造りが行われます。この行程がとても難しく、お酒の出来にも影響するそうです。

喜多酒造さんは、30年前から契約農家さんに依頼して、山田錦、吟吹雪、滋賀渡船6号、日本晴といった滋賀県産のお米を中心に使用して酒造りをしています。そして山田錦の縦への味わいの広がる特徴から、麹は山田錦を用いています。

 

熟成は第二の酒造り

出来上がったお酒は、大きな百石タンクもありましたが、基本は温度調整が可能なサーマルタンクで貯蔵され、酒質に適した温度管理がされています。サーマルタンクは2年前に5機増設し、現在では10機あるそうです。

また、蔵内に3℃の冷蔵庫と100坪、そして来るときに見えた借りている冷蔵倉庫に100坪、トータルで200坪分のお酒が貯蔵・熟成されています。

瓶詰めする際には、プレートヒーターを用い65℃で火入れし、パストクーラーを使用して急冷、瓶詰めされています。

本日はここまで、つづく。。