酒の勝鬨酒蔵訪問記 福井県勝山市『伝心・一本義』一本義久保本店 2020年2月13日

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 昨日の酒が残っているようで喉がカラカラだ。水を求めてホテル付近の自販機に前のめりでコインを投入するも反応がない。おかしいと思い返却レバーをガチャガチャしても戻ってこない。なんてことだ、金を吸い取られたあげく水も飲めない。 というか電子マネーは使えないのかと、脳みそもカサカサになりあたふたしていると、前方から一本義久保本店 道林部長が約束の時間キッチリにやってくるのが見えてきた。早すぎず遅すぎない正確無比なプロフェッショナルお出向かいに感心してぽわーっとしていると、すぐ出発になりさらにワタワタが上昇。ちょうど1年前のことなので、車中は記憶をたどって景色をぼんやりと眺めて大人しくしていると、明らかに覚えている風景が見えてきた。

 蔵元に到着してあの立派な応接間に通されると、映画のワンシーンを見るように威勢良く久保格太郎社長がやってきた。今日もビシッと決まったいで立ちと、巧みな話術で僕らを引き込んでいく。その一方で、ペラペラに干あがった私は出されたお茶で待望の水分補給をするが、なんかしょっぱい。喉が渇き過ぎたせいなのか不思議に感じてたので、あとで堀口に伝えると玉露の味だと言う。確かに調べると玉露はしょっぱいとの記事が出てくる。日本酒もさまざまだが、お茶の世界もさまざまだ。

また来たよ!社員さんにご挨拶。ここまで雪が降らないのは記憶がないとか

空撮による一本義久保本店ビフォアアフター。

一本義久保本店

初代の直蔵より、農業を中心として林業・生糸業・機業などで生計を立ててきた久保家でしたが、明治35年、隣家の酒造家が廃業されるということで、 5代目当主の仁吉が酒蔵・道具一式を買い受け、酒造業を興しました。 当初の酒銘は、地籍(福井懸大野郡勝山町澤)に由来するとともに、白山の伏流水による豊かな湧き水を象徴した「井」を併せ、「澤乃井」としました。 しかし、この酒銘を長らく名乗り続けることはできませんでした。 当時の家業の中核であった機業製品の出荷と合わせて、横浜へ酒を持参した際に、東京にこの時すでに百年以上前から同銘を使われている酒造元があったことを知るのです。 その帰りの汽車中、たまたま隣り合ったのは同郷勝山の屈指の素封家といわれた笠松家のご当主でした。 酒銘を再考する必要があることを話すと、「それならば、うちが昔殿様から拝命した酒銘を受け継いだらどうか」と、 勝山藩小笠原家の御用酒銘であった「一本義」を譲り受けることになったのです。 一本義は、禅語「第一義諦」に由来し、それは「最高の真理、優れた悟りの知恵を極めた境地」を意味します。

 油断していた。一言でいうならこうである。先ほども述べたが、前回訪れたのが1年前。そんなに大きな変化はないであろうと、安易な予想をしていたがすぐに覆される。見学が始まるとメモ書きは止むことはなく、スマホを押す指はフル回転。もしかしたら昨年は知らなかった、気付かなかったこともあるだろうが、これはポヤポヤとしてる場合じゃない。すると格太郎社長が「これ去年なかったやろ」と、出荷場にある大きな鉄製の棚台を指差す。上の空間を利用することで整理整頓が向上するという。おそらく手作りか特注品であると思うが、昨年に来た時も整理整頓されてると感じていたので、まだ物足りなかったとは恐れ入りる。わが社も学ばなければならない。

 さらに進むと、去年はあった調合用の大きなタンクを2台撤去したとのこと。あのどデカいタンクをどうやって運び出したのか想像できないが、これまた思い切った行動だ。ものを無くすことで空間が生まれ、するとアイディアも生まれるとの考えだそうだ。なるほど棚もそうだが、自分の家に置き換えて考えてみるといろいろと教訓となるところがある。ここは自分も一本義流に即行動に移そうじゃないかと、後日思い切って棚を購入した。しかし撤去が進まず気付けば今日も日が暮れていく。一本義流への道のりはまだまだ遠い。

新たに導入した棚。この空間がどう変わるのでしょう、楽しみ!

 昨年も触れたが、蔵は3階建の鉄筋コンクリート造で、原料を最上階に運び上から下へと作業が流れる構造。勝山でかなり早くにできた鉄筋コンクリートの建物で、建設から50年以上はたっているということからも随分前から近代化していたことになる。最上階に上がると袋に入った酒米があり、そこには契約農家の名前が記されている。同じ酒米でも生産者によって性質が異なり、混ぜてしまうとブレが生じると言う。特に伝心銘柄に関しては単一の生産者の酒米をタンクごと分けて性質を見ながら仕込みをするそうだ。米に限らず野菜や果物などは、同品種でも味が異なることなんてよくあること。異なる性質の原料から、一つの製品として仕上げる技術には尊敬しかない。

道林部長にご案内頂きました。契約農家産「越の雫」

 当日は鑑評会用の大吟醸酒が仕込みが行われていたので、一部は見ることができなかったが、逆にそれ以外を見せていただいたことが感謝である。一本義久保本店で使用されるタンクは通常750kgのもので全部で20基あり、今年は120本ほどの仕込み予定だそうだ。タンクの周りを不凍液で包み、マイナス5度での徹底管理。昨年は銀色だった瓶貯蔵される冷蔵コンテナは白く塗り替えられていたが、光を反射させる作用をがあり、温度が上がりづらくなったそうだ。とにかく蔵のあらゆるとことで冷蔵管理、冷蔵機能が整備されている。当然ながら電気代が半端ないそうだが、今の時代に必要なこと、しっかりやらなければならないと強調する。酒質面の向上だけでなく、安心、安全に飲めることが、今の時代は求められているのだろう。

冷蔵管理に、冷蔵庫。徹底的です。

 蔵見学が終わると昨年と同様に試飲のお酒をご用意いただいた。それぞれのお酒を冷酒とお燗で飲み比べると、伝心の「雪」「稲」「土」、一本義「純米」「辛口純米」と、全てにおいて「酸」を感じる温度帯があることに気づく。この「酸」と合わせる料理や食材に「日本酒のチャンスがある」と、格太郎社長。そしてここ勝山市などを奥越前と呼ぶそうだが、奥越前は広島、長野と並ぶ軟水トップ3の水源で、日本酒のテロワールは「水」ではないか。などなど興味深い話しを聞きながら、充実の時間はあっという間に過ぎていくのであった。

レギュラー・ライナップを中心に試飲させていただきました。

最後に記念撮影、お忙しいところありがとうございました!

 お酒をいっぱいいただき、おなかがペコリ出したなあと思っていると、道林さんが昨年に続き福井の名物「ソースかつ丼」をごちそうしてくれというではないか。今年は蔵元から近くにある「グリルやまだ」という、家庭的な雰囲気のお店だった。カリっとした食感と、すっきりとしたソース味で、ついつい無言で食べ続けてしまった。

 久保格太郎社長、道林部長、そして蔵元の皆様方、仕込みのお忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございました。

福井名物「ソースカツ」 定食バージョンをいただきました

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